第2021話:カラレル・レベルト~武者修行~
「そんな死にかけるような思いをして、なぜ強くなりたいんだ」
「殺しかけた方が言うことかよ」
山奥に一人で住んでいる仙人のような拳法の達人に修行のために勝負を挑んでボコボコに負けた。
「殺さないでやったろうに、ほら立って付いてきな」
「どこ行くんだ?」
「うちだ。強くなりたいんだろう?」
「ぐぅ、体中が痛い、立ち上がれん」
骨は折れていないが全身打ち身だ、力を入れれば痛みが走る。立ち上がる気力もない。
「じゃあそのままそこでのたれ死ぬといい、私は一向に構わないよ」
「あーわかったよ!」
ガバっと勢いよく体を起こす。体中に痛みが走るが、まぁ何とか動けないことは無かった。煽られて気力が湧いてきた、我ながらなんという単純さ。
家について行けば彼の日常の修行がわかるだろうし、それを学べば俺もさらに強くなることができるような気がする。
しばらく彼の家に住んでみたが、彼は特に修行らしい修行は一切していなかった。
朝は畑の世話をして、昼は日に当たり、夜は寝るだけ。
ただの生活だ。
「修行は!?」
「修行ー? そんなことより畑を手伝え、食い扶持が増えたから倍育てないといかんのだぞ、自給自足というのは大変なのだぞ、無駄によく食べるしなお前は」
「まさかこの農業が修行とか言う気じゃないだろうな。日常全てが修行とか」
「言わんよ。とりあえず自分で食べる分は自分で作れるようになってからだよ、戦い方を教えるのは。今お前に教えるのは食料の作り方、それだけ」
「じゃあそれを覚えて自分で食料が作れるようになったら修行着けてくれるんだな?」
「次に教えるのは寝床の作り方だ。今は寝床が狭くて適わん」
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