第1998話:カラマ・トリアル~触れると死ぬ~

「私に触れてはダメです!」

「おっと、ごめんごめん触られるの嫌なタイプの子だった?」

 普段は接触のコミュニケーションが多いからうっかり触ろうとしてしまった。

 やけに強く拒絶されてしまった、慣れてなかったり嫌いだったりするのだろう。

「私はもう誰にも触られたくはありません……殺してしまうのは嫌なので」

「え、どういう……?」

「私に触れた人は死んでしまうんです」

「そういう体質ってこと?」

「そんな感じです。だから、私は誰にも触られたくはないんです」

 難儀な体質だ……

「てことは、誰か殺してしまったことがあるってこと?」

 無言でうなずいた。

「おおぅ……」

 しまったと思う、本当にうかつだった。

 彼女の体に触らないことに気を付けてはいたが、これは彼女の心の触ってはいけない場所に触ってしまったかもしれない。

「いや、その、ごめん……触られたくなかったよね、ほんと、ごめん……」

「だいじょうぶ、です。触ったら殺しちゃうってことを説明するとみんな同じようなことを聞いてくるから。気にしてないです。事故でも殺しちゃったことがあるのは、事実ですから」

「うん……」

 辛い人生だ……

「そういうことを聞いてきた人には触ってもいいことにしてるんです」

「え?」

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