第1971話:リオン・レガーテ~願いの形~

「何もなくなってしまったな」

 そこはかつて想像の街と呼ばれた土地、ある日ちょっとした事件によりすべてのオブジェクトが消去されてしまった。

 住人たちは消去されなかったものの、住居をいったん失ってしまったがために一度街を出ていた。

 街の消去の原因となった旅人がその土地から離れたことが確認され私を含めた何人かの住人は戻ってきたというわけだ。

「さすがに一度無になると想像力で街を補完するのは厳しいなぁ」

「うーん、確かに。既存のある街を見て想像力での付け足しが基本だったからなぁ。できても外観の存在しない自室とかその程度」

 外から見るとプレハブですらない、かろうじて材質がコンクリートに見える直方体。

 普段は外装や材質は隣接する建造物の延長と考えることでずいぶんと想像しやすかったのだが、材質も何もない無の土地を引き延ばすのは難しい。

 できてなんとなく建材としてイメージしやすいコンクリートを引っ張ってくることぐらいだ。

「もうちょっと想像力が強い人が戻ってきてくれると街も街らしくなるんだろうけど」

「このままだとこのコンクリブロックが積み重なったブロックタウンになっちゃうもんね」

「それはそれでいいけれども……面白そうだし」

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