第1937話:リカル・フォヌ〜浜辺の椅子〜
浜辺に椅子が一つある。
波がぎりぎり届かない所に置かれたそれはいつからあるのか、誰が座るために置かれているのはわかっていない。
誰かが、きっと泳ぐ事のできない誰かが、きっと海のことが好きな誰かが、きっと脚の不自由な誰かが、海を眺めるために置いたのだろう。
椅子に座ってみる。
浜辺の細かい砂の上に置かれているというのに随分と安定している。
一度立ち上がり、椅子の下を見てみると砂の上に置かれているわけではなく、砂に埋まっている部分がありそうだ。
何かがおかしい。
椅子を置くだけならともかく、椅子を埋めるようなことをするだろうか。
砂浜での安定性を確保するために台座と接合して台座を埋めたのか……?
よく考えてみたら私がこの椅子を見つけたのはずいぶん前、初めてここを通りかかったときだ。
それほどの期間の間動くことなくそこにあると考えると固定されているというのは納得だ。
しかし、なぜ固定されているのかがわからない。
誰かのために置いた椅子なら、誰かが座るときに置けばいいはずだし……
ふと、思い当たったのは誰かを座らせたまま固定させて放置するという使い方。
確か夜にはこの砂浜は完全に沈むはずだ。
……考えないようにしよう。
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