第1931話:タラミラ・ウラレム~貨幣拾い~

「おやおや」

 道に貨幣が落ちている。

 物理貨幣なんて一部の地域でしか流通していないし、こんな道端にこうも無造作にばらまかれている物ではない。

 ……拾っておくか。

 路上にしゃがみこんで路面に張り付いている貨幣を一枚ずつはがして拾っていく。

 なんだかすごい懐かしいが同時に情けないことをしている気がしてきた。

 実際珍しい貨幣で周りに人がいない上、拾得物を警察へ届ける目的で拾っているとはいえ、体感では自動販売機の前で小銭を散らかしてしまったときにしゃがんで拾っている時の何とも言えない情けなさがある。

 さっさと拾いきってこの場を去ろう。

 人が来る前に、ただ落とし主が来てくれれば拾ってまとめておきましたよと渡せるから良いが。

 そうだ、誰かが来て二人で拾うことになればあんまり恥ずかしくはない。

 お互いが手伝っているという体裁が整うから、そうなるのだろうか。

 1人で拾っていると実際は善行的なことをしているのにもかかわらず、何とも言い訳をしたくなってしまうような気持になるような眼を向けられてしまうんじゃないかと、そういう感じだ。

 しかし、いくら拾っても拾いきれない。

 いくつ落ちているんだ、ある程度拾ったらもういいかと切り上げようと思ったが、拾うと次の貨幣が目についてそれも拾おうとなってしまうのだ。

 結構拾ったが……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る