第1889話:アパー・ラビッツ~麻痺直し~

「くそぉ、毒を食らって体が痺れてしまった」

 まさかこんなところで体が麻痺してしまうとは……

 一人でいるときにこんなことになってしまうとなると、これは死を覚悟してもいいぐらいにはピンチだ。

「腕も脚も動かないが、口だけはよく動くな。めっちゃ喋れるじゃん」

 これならもしかしたら助けとか呼べちゃうのでは?

「おーい……だれかー……」

 ダメかもしれない。

 口は動くし声も出るが、思ったよりも大きな声は出ない。

 これでは助けも呼べないかもしれない。

 一瞬助かるかもって思った分絶望度合が高い。

 他にも動く場所がないか、いろいろ動かそうとして考える。

 うーん、動かない。

 さっき声が思ったほど出なかったときは絶望したが、痺れてるにしては思いのほか動かせる場所があるっぽいことが分かったことで、逆に余裕が出てきたかもしれない。

 まぁそれでも口以外はあんまり動かないんだが。

「指先が関節一つ分動くのは発見だ。神経の伝達が阻害されているわけじゃないのか、この麻痺は。てことは案外何とかなるかもしれないし、時間経過で回復する可能性もあるかもしれん。大きい声は出ないが普通の声量で声を出す分には普通に出る。しゃべり続ければ近くを誰かが通ったときにもしかしたら気づいてくれるかもしれないしな」

 最悪のピンチも何かできることがあるだけで少しは余裕ができるものだということを学ぶことができた。

 既に一回死んだことがあったからかもしれない。


 それから3日経ったがまだ全身は動けるようにはなっていないが、片腕は動くようなった。

 これで手遊びの幅が広がる。

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