第1872話:パレウ・アプル~電子書籍~

「異世界に転生したら里の秘伝であったはずの書物が電子書籍になって市場に流通していたのだが」

「なんて?」

「信じられないかもしれないが、うちの里の秘伝とされている情報を知っている人間がこの世界に二百人ほど存在している」

「二百人!?」

「由々しき事態だ……」

「誰がその情報を持っているかはわかっているのか……!?」

「ああ、脆弱なセキュリティのサーバーだったから、すでにデータは削除して購入者の個人情報を入手済みだ」

「さすがに優秀だな。では始末しに行くか」

「ああ、まぁ里の出身者であることもあるだろう。その場合は協力を仰げるかもしれん」

「ああ、しかし流出させたものも里の者であると見ている」

「まぁそうだろうな。秘伝のものが流出するというのならそれしかない。うちの里に間者が入り込んだという記録もない」

「うむ」


 そうして秘伝の書を見た者を次々と始末して回ったものの、元里の者は誰一人見つかることはなかった。

「おい、これで全員なのだろうな?」

「もちろんなんども確認した。他にこの書を所有している者は存在しない」

「ではこの書はどこから流出したのか」

「わからん……しかし今のうちは全てのデータを回収できたということにしよう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る