第1836話:フカ・アバリト~後ろ面~
「あの人、後ろ向きに歩いてる?」
街中で不思議な人を見た。
普通に歩いてるように見えたが、顔は後ろに向いている。
「ああ、初めて見たのか。あれは顔が後ろについている人なんだよ」
「あー、なるほど……?」
納得しかけたがなんか違う気がする。
「いや、それは違うんじゃないか?」
「何がだ?」
「いや、顔が後ろについているなら、そっちが前なんじゃないか?」
「ん、それは……」
「そうだろ? 両側に顔がついてるならともかく、後ろにだけ顔があるんだろ? だったら、顔がある方を前にして歩いた方が安全だし、そっちが前なんじゃないか?」
「いや、そんなこと俺に言われても知らんし……」
「そっか……、なら」
本人に聞くしかあるまいよ。
「なんなんですかあなたたち!」
「すごい、対面してる状態でも顔が後ろを向いている、後ろを向いて歩くだけじゃなかったんだ」
「それ対面してるって言わなくない?」
「ああ、そういう話でしたか。ちゃんとそっち向いてますよ。歩くときも前を向いて歩いてますし」
「え、これ後頭部では?」
「そう見えるだけです。試しに後ろに回ってみてくださいよ。顔っぽく見えるだけで後頭部なので」
「えー、あ、本当だ。これ目に見えるだけで肌にある模様だぁ」
「ほら、本当の顔は髪に隠れてるだけでこっちにあるんですよ」
「うわー本当だ。よく見たら手足もこっちが前基準で付いてる」
「なるほどなぁ、後ろ向きに歩いてたんじゃなくて後ろに偽の顔が付いてたんですね」
「なぜそんなことを?」
「…………」
回答はない。
「なぜそんなことを?」
回答はない。
変な人だったからか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます