第1664話:チーティオ~いかさま~
「このくじはいかさまだ!」
そう叫んだ人がいて、場は静まり返った。
「何を黙っているんだ、このくじはいかさまだって言っているんだ」
それが何を意味しているか、そんなことは説明するまでもないだろう。
言いがかりだ、この場にいる人は全員このくじは平等だと思っている。
そんな場所でいかさまを叫んだらどうなるかわからないわけがないだろう。
そんなことは当然わかっている。
今叫んだのは、俺だからだ。
「このくじの何がいかさまだって? 言ってみな」
胴元側の一人が詰め寄ってくる。
今なら気のせいで許してやる、冗談だった、注目をひきたかっただけなんだ、そう訂正しろと、目だけで脅してくる。
当然俺はそんな脅しには屈しない、なぜなら自信があるからだ。
なんのかって? そりゃあこのくじがいかさまであることと、それに気づいている俺をこいつらは始末できないということ。
「まぁまぁ落ち着いて、まずは話を聞いてもらおうじゃないか。俺はこのくじを用意するところを見ていたんだ、あんたこのくじはさっきまとめて受け取って持ってきた。あんた自身はこのくじを用意した本人ではないんだろ? じゃあなぜくじにいかさまがないとなぜ断言できる」
「ぬ……」
断言できるわけがない、なぜなら俺は知っている。
「貴様……!」
気が短いやつだな、もう暴力に訴えかけてくるのか。
それを見て、横に控えていた者が止めに入る。
くじ場で暴力沙汰などよろしくはない。
「というわけだ、君はクビだな」
雇い主は俺自身なのだ、最近このディーラーが暴力沙汰を起こしたがそれを隠蔽しようとしたという話を聞いて、自ら調査に来たというわけだ。
ちなみにくじにいかさまは仕込まれているし、なんなら今この場にいる彼以外の全員が仕込み、いかさまに騙されたのは彼というわけだ。
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