第1652話:スギル・ウィロウ~導き~

「こっちだよ」

「はーい、そういえばどれぐらい前からここで案内人をしてるんですか?」

「そうですねぇ、かれこれ10年ぐらい前からですね。その前は私も以前いた案内人さんに案内されないと迷って迷って」

「この辺妙に複雑ですからね」

「複雑っていうより、人を迷わせる仕掛けがしてあるんですよ。住んでいる人は抜け方を知ってるから、迷うことはめったにないんですけど」

「ああ、そうなんですね。人を迷わせる仕掛けっていうと方向感覚を奪うとか?」

「そうそう、あっちとかこっちとかそう曖昧な表現での案内が多いでしょう? ここでは右とか左とかいう指示をしても、無意識におかしくなって案内が成立しないんですよ」

「右は右でしょう?」

「それは左ですね。右はあっちです」

「? それは右では?」

「そうですよ、左ではなく、右です」

「???」

「よくわからなかったと思いますが、伝達と感想に難があるので、右や左と具体的な表現を避けて曖昧な表現をしてるんです」

「それも迷わないコツってやつですか」

「そういうわけです。あそこを右とか左とかっていう風に覚えてると迷っちゃうんですよ」

「はぁー、なるほどねぇそりゃあ大変な話だ」

「そうなんですよ。あ、ここをこっちですね、着きましたよ」

「ありがとうございます、帰りもよろしくお願いしますね」

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