第1629話:ミリグ・ヴィジュル~賭け事の神~

「今日もみんな賭け事に精が出るなぁ!」

 私は賭け事を司っている神、みなが私に祈るのでずいぶんとこの世界での力も増した。

 まぁだからと言って何をするわけでもないのだが。

 増した力を使って何をしているかといえばこの世界の掌握できる範囲の賭け事の様子を見守るという程度のことだ。

 しかし、賭け事をしている者は多いが、命を賭けたギャンブルというものは少ない。

 失敗したら死ぬような状況で一か八かで挑戦するという意味ではなく、勝負に負けたら死ぬという意味での命を賭けたギャンブルだ。

 人と人の限界まで知恵を働かせ、持ちうる運のすべてを信じて行う、人間のすべてを出し切るギャンブルを私は見たい。

 それがやはり最高に美しく、力のあるギャンブルだと私は思うのだ。

 この世界では所持金というものがなくなっても、最低限の生活は保障される。

 そのせいか、すべてを賭けたギャンブルでも命は賭けられていないということが多々ある。

 命を賭けたギャンブルを行っている賭場と一つは知っているが、そこだけだ。

 うん、仕方ないなこれは。

 私自らが手を出すのはあまり本意ではないのだが、これは誰かが手を入れなければ状況は変わらないだろう。

 やはり、相手の命なんていらないという意識が強いのだろうか。

 知っている命を賭ける賭場でも価値のないものだからという理由で賭けられているんだもんな……

 奪った相手の命を使えないのが理由かもしれない。

 ちゃんと賭けられたものは負けたら相手に移譲する必要があるな、私の力を使えば命でも譲渡させることが可能かもしれない。

 そうなれば、命を賭けたギャンブルがもっと見られるだろう。

 まずは相手の命を奪えるギャンブルの仕組み方について周知してやらねば。

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