第1601話:ミキス・ホデュット~ある話~

「無い話をしようと思います」

「無い話? ある話じゃなくて?」

「いえ、これは無い話です。いいですか? 無い話ですよ」

 無い話をするってなんなんだ……

 やけに念を押すし、やはりある話であって実際は無い話というていにして相談したいだけじゃないのか。

「これは私の存在しない友人が特に体験したわけでも無い話なんですが」

「まて、さすがにその前提は虚偽過ぎないか?」

「そりゃあ、無い話ですから」

「あ、あぁ……無い話、だもんな?」

 無い話、無い話すぎるが……?

 実はある話だと仮定するとどうなるんだ?

 存在しない友人が特に体験したわけでも無い話……

 普通に自分の相談事かな。

「話を続けるね? その日は朝から雨が降っていて、テンションが上がってたらしくて傘も起動せずに走り出したんだけど」

「待て、誰の話だそれは」

「だから、私の存在しない友人の話だけど」

「そうか……そんな狂人はいないんだな?」

「そうです、私の存在しない友人の話なので。傘も起動せずに走り出したから当然びしょ濡れになったけど、屋根の下に入ったあと体の発熱で全部蒸発させちゃったんだって」

「何の話?」

「だから、無い話だよ。架空の友人の誰も体験してない架空の話だよ」

「特になにか相談事かと思ったんだけど」

「別にそんなこと言ってないじゃん? ただ、無い話を思い付いたから聞いてほしかっただけだよ」

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