第1578話:ハイッチ・イドラ~精神力~

「なぜだ……! なぜおまえは死なない!」

 ありえないありえないありえない!!!

 目の前にいる男は全身ボロボロの傷だらけ、それどころか左手首から先は既に落ち、右目はつぶれているし右の頬は耳まで裂けている。

 脇腹からはさっきまで滝のように血が流れていたし、脚も折れているように見える。

 肋骨も何本か折れているだろう。

 胸にいくつか穴も開いている。

「どう見ても致命傷だ、なのになぜ!」

「そりゃあ、絶対に死なねぇっていう強い意志があるからだ!」

 どこからそんな声が出るのかというほど大きな声で怒鳴られた。

「意志の力で死なない程度の怪我じゃないだろうそれは!!!」

 思いがけず同じぐらいの声が出た。

「なんなんだ? お前は不死なのか? 精神力の強さだけでそこまで致命傷に致命傷を重ねた上で死なないんだったらこんな世界に来ることは一生ないだろうが!」

「そんなことはない、そんなことはないが、少し黙っていてくれ。今少しでも気が抜けると、死にかねない……」

「あ、そうだよな。病院まで行ければ何とかなるんだよな?」

 彼は私を守ってこの怪我を負った。

 その彼を今は病院へ連れていくところなのだが、本当に病院へ連れて行くだけでなんとかなる怪我かこれは怪しいのだけれど、彼が言うなら仕方ない。

 まったく、どういうからだと精神の構造をしていればこの怪我で生きていられるんだろうか。

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