第1564話:テイル・フォウド~盲信~

「この世界は夢の世界である、目をさませ! この世界は死後の世界ではない」

 ターミナル前でそういう演説をしている人を見かけた。

 確かに、この世界は現実味がない。

 死んだと言われてもその時のことをはっきりと覚えているわけでもないし、実際は夢だと言われてもそうかもなと言う気がする。

 演説をしていた彼らは同志を募っているようだったし、話を聞きに言ってみようかな。


 配っていたビラに書かれていた時間に書かれていた場所に向かうと、先ほど演説していた人が立っていた。

 彼は私の持っていたビラを見るなり事情を理解して

「やぁ、よく来てくれたね。最初に確認だけいいかな?」

「え」

 返答をする前に服をまくられて腹を出させられた。

「え、ちょっと、何なんですか!」

「いや、すみません。『夢主』の端末かどうかを確認したのです。端末なら腹部に印が出てるので。さて、ついてきてください」

 どうやらその『夢主』と彼らは敵対しているようだ。

 拠点にはそこから離れた場所にあるらしく、歩きながら話はじめた。

「『夢主』……?」

「はい、『夢主』とはこの夢を見ている存在のことで、私たちはその夢に囚われているのです」

 囚われている、なるほどな。

「『夢主』はなぜ私たちを夢に閉じ込めているんですか?」

「わかりません、わかっているのは私たちが目を覚まして現実に帰るのを邪魔することだけです」

「そもそもこの夢から覚めるにはどうすれば?」

「それはわかっています。この夢を見ている『夢主』を殺すのです」

「え、」

「ああ、殺すと言っても夢の中で殺すだけですよ。経験ありません? 夢の中で高いところから落ちてびっくりして起きたこと。あれと同じですよ。夢の中で死ぬとびっくりして現実で起きる。そう言う事です」

「なるほど……」

「だから我々は仲間を増やして、『夢主』を探し出さなければなりません」

「死ぬと目が覚めるのなら、私たちがここで死ぬのは?」

「お勧めしません。夢に囚われている間は肉体が衰弱しています、この状態で死んで驚いて起きようとすると、最悪現実でも命を落とすことになるので」

「なるほど……」

「だから、私たちはどうしても『夢主』を探し出さなければならないのです。さて、着きましたよ。どうぞ中へ」

 たどり着いた壁と見分けがつかない扉を開けて、中へ入っていく。

 後ろで扉が閉まる音がした。

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