第1561話:テルテル・ポット~鉄道旅行~

 本を閉じて窓から流れる風景を見る。

 グリテルヴァ鉄道、この世界では数少ない鉄道路線だ。

 長距離の移動は基本的にゲートを用いて一瞬で移動をするが、一部の鉄道にこだわりがある人たちが線路を引いて鉄道網を構築している。

 そこに私のような鉄道好きが集まって鉄道旅行をしたりするわけだ。

 私は列車旅は好きだ。

 余裕を持って練ったスケジュールに担保された長時間の車内拘束による行動の制限。

 手元でできる暇つぶしとして溜まった読書などを無限に消化することもできる。

 私は駅で買って持ち込んだお弁当を開いてこのあたりの名産と言うことなっているいくつかの料理をゆっくりと味わいながら食べる。

 食べている途中に列車が止まる。

 この列車は途中に数十個の駅で止まるが、だいたいの駅では誰も乗り降りしない。

 ほとんどの乗客は移動のためではなく私と同様に電車での旅を意識しているので出発駅で乗り終点駅で降りる。

 そう思っていたのだけど、一人子供が乗ってきた。

 子供……? まぁ見た目で実際に子供かどうかは判断できないが、見た目は子供だ。

「うわー! これが列車かぁ!」

 その子供は乗ってくるなり大声でそう叫んだ。

 なんだ……?

 列車旅マニアが集まる列車に故、基本的にこの列車の治安は良い。

 皆が皆、それぞれの好きな列車旅行をするためにお互いが干渉するようなことはあまりないし、会っても列車好き仲間との会話をするために声をかけたり。

 あのような無遠慮に全ての空気を破壊する子供のようなふるまいをする人は珍しい、本当に子供だからだろうか?

 もしかしたら突然乗ってきて情緒を台無しにするというロールをしている列車好きの大人かもしれないが、まぁ、いいか。

 子供が騒がしくしているのも列車旅っぽさがある。

 これはこれで情緒があるというものだ。

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