第1558話:ヒイキ・カルアイ~末期の言葉~
「最後に言った言葉?」
「そうそう、この世界の飲み会定番の話題だって聞いたぜ。皆覚えてんだろ?」
「えぇ、初めてそんな話聞いたなぁ。死ぬ前に最後の言葉か……もう何十年も前のことだしな……いや、覚えてるかもしれない」
「お、なんて言って死んだんだ?」
「『あとは任せた……』だ」
「えぇ! かっこいい! あなたは戦場で味方をかばって亡くなられたんですね!」
「いや、嘘だろそれは。よく同郷の俺の前でそんなこと言えたものだ」
「え、嘘なんすか?」
「ああ、こいつは別に戦争に行って死んだわけじゃないからな。俺たちの世界は平和で、戦争なんて歴史かフィクションの中だけのものだったさ。そのセリフも好きだった映画の好きなキャラの最後のセリフじゃないか。わかってるんだよ?」
「いやいや、待て待て、お前の方が俺より先に死んだろう? あの後だな、戦争があって……」
「馬鹿かお前は、こっちで再会した直後に階段で脚滑らせて死んだって言ってたろうが、どうせお前のことだから末期の言葉は『うおぉぁあああ!』だ」
「それは末期の叫びだろうが」
「それは末期の叫びすね」
「どっちにしろ最後なんて思ってないんだからまともなこと言えてねぇだろ」
「それもそうすね。あなたは何て言ったんですか?」
「んん、さぁてな。覚えてねぇよ」
「『お前より先に死にたくねぇな』だよ。お前の最後を看取ったのは俺だからなぁ」
「あ、てめぇ自分のはねつ造したくせに人の奴は覚えてるんじゃねぇ!」
「一生忘れねぇよこんな話」
「次はてめぇが同じ言葉吐く番だからな!」
「馬鹿め、お前の方がこっちに5年先に来てる。つまりお前の方が先に寿命が来るってことだ!」
「いやぁ、二人とも仲がいいね。ちなみに俺は……『ここは任せて先に行け』だったかな。釣り天井が落ちてきてさぁ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます