第1488話:シシスカ・ハルカ~夏の終わり~
日が少し登って死ぬほどの暑さも少し落ち着いてきたころ、一つの出会いがあった。
「私は夏の精、もう残り短い間ですがよろしくお願いします」
「もうすぐ夏は終わりますけど」
腰まで伸びたまっすぐな黒髪に麦わら帽子をかぶり、白いロングのワンピースを着ている絵にかいたような夏の美少女。
そういう容姿をした夏の精を名乗る不審な少女は僕の前に現れた。
「仕方ないじゃないですか! この世界の夏季は暑すぎるんです! 私が活動できる気温を遥かに上回っていたのでこの時期になってやっと出てくることができたんです!」
まるでセミみたいだな。アレも気温が高すぎると全く見かけないし。
「出てこれないって、今まではどこにいたんだ? 消えたり出たりが自在なのか?」
「いえ、自室に籠ってました」
「自室とかあるんだ、夏の精」
「まぁ夏の精とはいえ生きていますからね、暑いのには弱いんですよ、儚げな夏の存在なので」
見た目は儚げだが、ずいぶんと図太そうな物言いだ。
確かに僕の知っている夏の精のイメージはこんな感じではある。
「そろそろ本題に入ろう、夏の精が僕に何の用だ?」
頭が痛む。
「ただ目に付いた、私のことがわかりそうな人だったから声をかけただけです。残り少ない夏、よろしくお願いしますね」
「なんだ? 僕についてくるのか?」
目がかすむ。
「ええ、まぁ妖精というものはそういうものですから……」
暗転
「あ、気付きましたか?」
目が覚めると病院のベッドの上。
「熱中症ですね、もうだいぶ涼しくはなったとはいえ、まだ暑いですから」
どうやら倒れていたところを誰かに病院まで運ばれたらしい。
まさか夏の精というのは夢か……?
「起きましたね、熱中症には気を付けてくださいよ~」
夏の精だ。
「お前が僕をここまで?」
「もちろんですよ! いきなり倒れたんですからびっくりでしたねー!」
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