第1474話:スエン・カリディオ~掌の上~
「まったく、ずっと誰かの掌の上で踊らされているみたいだぜ」
「みたいだぜではありませんよ、現にあなたはまだ私の掌の上から出られてすらいませんので」
「言ってみただけですよ! ていうか、めっちゃ掌が広いんですよね、エルディエオ砂漠ぐらいありません?」
「私の掌は狭いですよ、ありとあらゆるものを救い上げることすらできません、ただあなたがこの程度の場所からも抜け出せないぐらいくそ雑魚なだけです」
「慈悲深い存在かと思ってたのにめちゃくちゃ口が悪いんですよね! あんた!」
「ええ、私も未だ修行中の身ですから。本来であればこのようにあなたなどを掌の上でもてあそんでいるような暇などないのです。ただ、どうしても見過ごせない程に私のすぐそばで悪業を行おうとしているのが目に付いたもので、これは徳を上げるチャンスとあなたの悪業をこうして止めているというわけです」
「自分の欲だだもれですけどぉ!? それで徳って上るものなんですかねぇ!!!」
「もちろんですとも、悪人を更生させる以上に徳が上がる行為がありましょうか」
「それは間違っていないとは思いますけどねぇ、それが俺のためだったりした方がいいんじゃないですかね!」
「おっふ、いやいや、そんな悪人のために悪人を改心させたりなんかしませんよ。私としては悪人は悪人らしくむごたらしい死を与えられてほしいのですが、立場上改心させて徳を高める方向へ導かざるを得ないのですよ」
「やっぱりあんたその立場なんとかしてやめた方がいいんじゃないですかね? こっち側だと思うですけど」
「む、ちょっとムカッときました。いや、ムカッとは来ていません、一時の感情に身を任せるなど私たちはしないものです。それはそれとして手をそろそろ握りしめたくなってきましたね……」
「いやぁ、やっぱり天職かもしれませんね! 悪人を改心させる才能がある! 私もこんなに言葉遣いが丁寧になりました!」
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