第1470話:チェチェ~宇宙の発見~
「見てください! 本当にありましたよ!」
「ああ、宇宙の存在を証明するのは悲願であったからな……」
空の向こうには重力が反転した別の大地があり、今立っている大地はほぼ無限で水平に延びているため、この世界には宇宙と呼べる空間は存在しないというのが一般的に言われている説だったのだが、私たちは宇宙も死ぬのでこの世界にも宇宙は存在するという説を支持して探し続けていた。
「でもこの宇宙、思ってたのと何か違いますよね」
「まぁ……、それは仕方ないというものだが……」
見つけた宇宙は暗闇だった。
宇宙という概念は難しく、何を持って宇宙とするのか、大地から一定の距離の空間を宇宙と呼べばいいのかそれともただ特定の立方空間内に何もないことを宇宙というのか、大気の有無か、それとも光を返す物のない底の抜けた闇を宇宙というのかで判断は分かれる。
大地からの距離であるのなら空の上、向こう側の大地との間の空間は宇宙だし、立方空間内に何もないのが宇宙であるならば星が点在する宇宙は宇宙ではない可能性もある。
大気の無い場所は大地の上にも点在しているし、今私たちが発見した宇宙は光を返す物の無い底の抜けた闇であり、彼女が指摘した「思っていた宇宙」とは星が点在する宇宙だった。
今目の前には闇があるだけであり、星は瞬かない。
「これもしかして、地の底にあるという死の充満したどこかって宇宙のことなのでは……?」
彼女がそうつぶやいて、確かに特徴としては似ている。宇宙が地の底にあるわけがないという先入観からの見落としだったのかもしれない。
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