第1467話:ウェリア・キビカリエ~チーティング~

「それはズルでは?」

 対戦格闘ゲームで、一方的にコンボを決められて何もできないままに敗北、

 思わず口から出てしまった。

「何もズルいことなどしていない」

 それはそうだ、うっかり言ってしまったが、彼もまじめな人間で、正当な努力の先に身に着けた力であることは間違いないだろう。

 しかし、私がどれだけ努力をしてもたどり着けない領域にいるであろうことは確かなことで、それを見てつい口から出てしまった。

 私が届かない領域から一方的に圧倒されてしまったら「ズルい」の一言も出てしまうものだ。

「すまない、ただのひがみだ。参考までにどのような研鑽を積んできたのか、聞かせて貰っても構わないだろうか」

「うん、その上を目指す姿勢。素晴らしいものだね。僕もあまり難しいことはしていないから君もすぐに同じことができるようになると思うよ、僕だってこのゲームは三季程前に始めたばかりだしさ」

 人格者だ、そして練習期間が思ったよりも短い。才能があるってやつか?

 やっぱりズルいなという気分はぬぐえない。

 いや、才能の有無はズルではないのだけど、なんとなくという感じで。

「簡単な話さ、詳細は検索してみるとわかりやすく解説しているサイトが見つかると思うけど、開始時に特定のコマンドを入力すると相手のコントローラーの反応速度が2Fぐらい遅くなるんだ」

「それはズルでしょ」

 いやそれはズルだよ。

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