第1435話:ヒル・ゲキオ~人間扱い~

「あなたのう運営している介護施設はすごい人気ですよね。運営方針として何か気を付けていることがあるんですか?」

「そうですね、入居者を人間として扱わないことでしょうか」

「えぇ!? ひどいじゃないですか、なんでそんなことを?」

「当然、その方が満足度が高いからです。少々過激な発言にはなりますが、うちの利用者というのは人間として壊れてしまっている人ばかりですからね。壊れてしまっているので人間としての扱いをする理由がないのです。例えるなら……そうですね壊れたテレビ、叩けば映ることがあるでしょう? あれと同じです。テレビをテレビとして扱っているうちは叩くなんてことはしませんよね、それをすると壊れるので。しかし調子が悪くなってくるとそれを人は叩き始めるのです。なぜか、壊れたテレビに対しては叩くことが正しい扱い方であるからです」

「壊れた人間に対しても、壊れた人間に必要な扱い方があると?」

「えぇ、その通りです。具体的なことも見てみます? こちら、うちのマニュアルです」

「どうも。…………? これめちゃくちゃ好待遇じゃないですか?」

「えぇ、もちろんです。壊れてしまった人間というのはですね、満足させるためにありとあらゆる手を尽くす必要があるのです。自分で考えて自分が満足できることをする人間には必要ないぐらいね」

「では最初に言った人間の扱いをしていないというのは……」

「ですから今語っていたでしょう? もしかしてあなたも人間の扱いをしない方がいい人ですか?」

「あ、いえただの確認の意味合いで聞いただけです、記事にした際に誤解が生まれるといけないので」

「なるほど、それは良い心がけです」

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