第1420話:ポエン・バリディア~粉末~

「さて、これが依頼されていた物だ」

 ビニールのパックに入った粉末を渡す。

「確かに、いつも助かってるぜ。質もいいしな」

 暗がりで人目につかないようにそんなやり取りをしていると、銃を持った人が飛び込んできた。

「違法薬物取引の現行犯で逮捕する!」

「ああちくしょう! だからこんな場所を取引に使うのはやめようって言っただ、いかにも怪しいじゃねぇか」

「大丈夫だ、問題ない。何か勘違いされているようですが、ここに違法薬物何てありませんよ」

「その袋だ、渡してもらおう」

「おい、どうする」

「仕方ない、渡してしまおう。調べて貰えば何も問題ないことがわかるさ。もしこれがあんたの勘違いだった場合は補填してもらえるんですよね、これも安いものではないので」

「わかった、できる限りは補填しよう。違法でなかった場合はだがな」

「だってさ、渡してやろうぜ。このままだと取り押さえられて無理やり奪われちゃうぜ」

 もう一パック用意してあるしな、これは自分用だけど。

「しかたない……」

 しぶしぶと言った様子でパックを渡す。

「協力感謝します」

 受け取ったパックを小型の解析器に入れた、結果が出るまでに少し時間がかかるだろう。

「どうです? ただのお菓子の粉でしょう?」

「お菓子の粉?」

「ええそうです。ただのお菓子の粉、ご存じです? フエリバってお菓子なんですけどアレの粉が非常においしくてですね、私はその粉だけより分けてパッキングしたものを高値で売る仕事をしてるんです。純度が高い物は作るのが難しいので、結構な価値が付くんですよ」

「……結果が出た。確かにフエリバの粉末だ。恐ろしく純度の高いな」

「でしょう? 何も問題は無かったということで、代金の方を」

 ごまかしでもなんでもなく、事実なのだから当然の成り行きだ。

 わざわざこんな場所で受け渡しをしていたのは雰囲気のため、まさか本当に警察が乗り込んでくるとは思わなかったが。

「……言いづらいことなのだが、実は先日そのフエリバの粉末が違法薬物だと発覚してな。今こうやってフエリバの粉末売りを急いで抑えているところなんだ、すまないが御同行願おう」

「えぇ! じゃあもうフエリバの粉は食べられないってことですか!?」

「なんてこった……」

 やけに中毒性が高いと思っていたが……まさか……

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