第1385話:フリカリ=ロンディオ~特別な人~

「君は人間を特別だと思っているようですね」

 辻議論を見かけたので、その中心となっている人物に声をかけた。

「それはそうだろう」

 人間至上主義と言うか、他の生物とは一線を画す存在であると確信しているようだったので、それをつつきたくなってしまった。

「それはなぜ?」

「人間は言葉を操れる、わかるか? 言葉を操れるということはそれだけ思考に幅が存在し得るということだ。言葉の有無が人類を世界の覇者に押し上げたと言っても過言ではない」

「なるほど、しかして言葉を操るのは人類種以外にもいるだろう?」

「それらは基本的にこちら側だ。何も私は人類種のみが特別だとは言っていない」

 それはそうだ。

「言葉を操れば人以上であり、特別であると私はそう考えているよ」

 なるほどね。

「言葉を操れば人以上ということは人は言葉を操る中では最低クラスということですか?」という言葉が周りから聞こえたがお互い無視して話を続ける。

「ならば私も人類種ですか?」

 そう言いながら、姿を明かす。その途端辺りがざわめく。

 私は普段は人のふりをしながら人に溶け込んでいるが、その実体のつくりは人ではなく、獣と称される物だ。

 親に言葉を操る知性は無く、生まれてすぐに人の元で育てられて言葉を話すと知れては排斥され数多の人間の下を渡り歩いてきた。

「そうだろう? ここまで話せて獣などと言うことはあるまい。私は言葉を理解できる者を人だと思っているが、君は私の言葉を理解できなかったかな?」

「いえ、そういうのならば私は人なのでしょう」

 彼の揺らがぬ反応を見て服をまた被りなおす。

「そうだろう、なにぶん私は目が見えないからな。人かどうかは言葉が通じるかで判断する他ないのだよ」

 彼はそう言って笑った。

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