第1366話:ヒアカリ・ステハ~人身売買~
「次の商品は――――」
今日の任務は潜入捜査だ。
このオークション会場で、人身売買が行われているという話を聞き実情を確認しに来た。
今のところは高価な調度品ばかりで人間の出品は無い。
さすがに一見の客を入れるような場所でそんな危ない商品は出さないか?
通い詰めて信頼を得なければならないかもしれない、長丁場な捜査になるかもしれないが、望むところだ。
「さて、今日最後の商品を紹介します」
もう最後か、結局人間の商品は一つもなかったな……
「最後の商品はウリアエルちゃんです!」
何と、最後の最後に出てきた。
人間が出品されている。
精巧に作られた人形かとも思ったが、檻に入れられ実際に動いている。
金銭でやり取りされる人間にしては笑顔を振りまいているが、そうしないとより劣悪な環境に送られかねないとか理由があるに違いない。
そんなことを考えながら見ているうちにどんどん高値が付いていく、落札して救助したいが、そんな予算は出ない。
引き渡しの現場を押さえて人身売買の現行犯ということにするしかないだろう。
オークションが終わり、こっそり裏に忍び込み商品引き渡しの現場をこっそりと監視する。
来た、最後の『商品』の受け渡しだ。
透明なガラスケースの中に綿を詰めてそこに眠らされている
「人身売買の現行犯で逮捕する!!!」
『商品』が落札者の手に渡った瞬間に突入、銃を向け相手の動きを制限する。
「人身売買だって!? 私たちはそんなことはしていない!」
「往生際の悪い、そんな決定的な証拠を抱えていまさら何を言っている!」
「これは人間ではない!」
「お粗末な言い訳だな、先程檻の中で動き笑顔を振りまいていたのを見たぞ? 人形の類ではないことは認識済みだ」
「そういう突入をするならしっかりとカタログを確認してからにしてほしいんだが……、これは全身義体だ」
「何?」
「全身義体だ、先日人間の意識転送実験に成功した最新テクノロジーの結晶。今回の商品はこの義体の使用権だったんだ。これがその権利書と義体と説明書だ、確認してみるか?」
「じゃあ檻に入っていたのは……?」
「最新機が一時的に入れているだけのパフォーマーに持ち逃げされたら困るだろう? わかったらさっさと帰ってくれ、迷惑料を請求される前にな」
完全に早とちりだったらしい、他に提示された資料も完全に理解できたわけではないが、不審なところは無く、このウリアエルという少女も転生者の記録には一切存在していなかった。
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