第1329話:フンヘン‐カルパル~花見の季節~

「この時期は桜という花が咲くのだ、桃色の小さい花で、大きな木いっぱいに咲くんだ」

「それがアレですか……」

「いや、あれは桜ではないです。決して桜ではないのです」

「じゃあなんで今桜の話したの……」

「あれを見て思い出したから……」

 指さす先には桃色の小さい花が大きな木いっぱいに咲いてる、桜ではないトレント木の怪物が暴れていた。

「桜は暴れないのであれは桜ではないです」

「桜種のトレントなのでは……?」

「桜っていうんのはもっと儚くて、きれいな花なんですよ……桜は大暴れしないんですよ……暴れるのは桜見ながら酒飲む馬鹿だけでいいんですよ……!」

「まぁ違うって言うなら違うんだろうけど、あれどうするんです?」

「さっさと討伐して花見にしましょう、動かなければいい酒の肴になると思います」

「あなたも桜見ながら酒飲む人なんじゃないですか……」



「これでトドメだぁ!!!」

 ドカーンと幹をぶん殴ってトレントの魔物としての命を砕く。

「お疲れ様でーす、あ」

「あ?」

 トドメの威力が強すぎたのか、それとも命を砕いたからかはわからないがトレントの花はすべて散ってしまった。

「桜吹雪と考えれば少しはオツなものかもしれんが……やっぱり見上げて花見したかったなぁ……」

「花見しないなら帰りましょうよ、もうここに用はないでしょう」

「まぁ、一杯だけ。倒したトレントに献杯的な意味でもな」

「普段そんなことしないくせに、桜だからですか?」

「こいつは桜じゃないから違うぜ、そういう気分だ」

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