第1299話:スピ・ガルパチ~無知無思考~
「人は生まれながらにして悪性を背負っているのです」
「と、言うと?」
宗教勧誘に捕まって話を聞かされている。
「人間の悪性には様々なものがありますが、私どもの教義では無知無思考こそが人間最大の悪性。生まれたての赤子は知も思考も持たぬ悪そのものなのです」
「なるほど」
「そして成長し、弛まぬ思考思索により、その悪性を濯ぐことこそが善性を構築する手段なのです!」
「なるほどなるほど」
無知無思考が悪か、まぁ言い分はわからなくもない。
しかしな……
「少しばかり弁に熱が入りすぎてますよ、少し声が大きいように思えます。落ち着いてください」
そう言って水を渡す。
「これは失敬」
「して、その教義はあなたが考えたものですか?」
水を飲んでいるところを狙って質問を飛ばす。
「んぐ。いえ、私達の経典に記された教祖様の教えです、今は離れていますが……」
「どうりで」
「なんです?」
「いやなに、道理であなたが悪性にまみれてると思っただけですよ」
「なんですって?」
まったく、宗教として成立させたのは教えを広めるのには都合がよかったけど、あまり目的通りの成果は得られないものだな……、もう一度やり方を改める必要がありそうだ。
「その経典には、考え教義を更新することも良いと書いてありませんでしたか? まったく、世の中の人間は無知で無思考の者が多すぎるから、どうしたら知をつけ考えるようになるかの一つの策としてやってみましたが、宗教化は失敗のようですね」
「え、まさかあなたが……?」
「あなたたちの教祖は二度と戻ることはないと、そう伝えておいてください。まぁ、その経典が改訂100度を越えた物を見たら考えが変わるかもしれませんが……、では」
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