第1288話:カイトル~回転劇場~
「回転劇場に来るのは初めてなんですけど、気をつけることってありますか?」
「うーん、基本的には普通の劇場と同じだよ。上映中にしゃべらない、立ちあるかない、ぐらいかな」
「ふぅん、そんなものですか」
「あとは酔うかもしれないから、酔い止めを飲んでおくといい」
「なるほど」回転劇場って舞台の方が回る劇場だろ? 舞台が動くからって別に観客が酔うってことは無いのではないだろうか。
不思議に思いながらも手渡された錠剤を手持ちの水で飲む。
円形の舞台を取り囲むように座席があり、中央に舞台があってカーテンがかかっている。
「そろそろ開演だ、見逃すなよ」
口に手を当てながらそう言った。
幕が上がって演劇が始まる。
ガコンガコンと視点が回り初め、舞台が正面から、横から、後ろからといろんな角度で見ることができる。
なるほど、これはなかなかいいものだ。
何度も来ているという友人の勧めてくれた席もいちいち決めシーンの度にいい角度にやってきて、大変満足いく場所だった。
しかし、これは……
「酔い止め、助かったよ」
「だろう? 初心者は大抵気持ち悪くなるからな、驚いただろう」
そう、大変驚いた。
まさか舞台ではなく客席の方が回転するとは……
最初に教えてもらった席を立つなも邪魔だからではなく危ないからだし、しゃべるのも舌を噛むからかもしれない。
正直いきなり席が動きだして最初のシーンは見逃した。
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