第1284話:フタキ・ビジラリ~理想の世界~

「世界には正しい姿というものがあるはずなんだよ」

「うん、それで?」

 居酒屋で友人とのサシ飲みの途中、変なことを言い始めた。

 酔っ払いの戯言だと思い、適当に相槌を打つ。

「今の世界はその正しい姿になるには余計なものが多すぎる」

「うんうん、この世界には物が多いからね」

「逆に、無いものも多い。バランスが悪いのだ」

「そうだね、いろいろバランスが悪い」

 まぁ人と技術のバランスは悪いよなぁ、技術ばかりレベルが高くて人が追い付いていない。

「世界の始まりにノイズが混じったんだ、この世界は全く正しくない姿になってしまった」

「うんうん、ノイズはいかんよね」

「余分な悪しき者は排除せねばならぬ、世界を浄化してやる必要がある」

「ああ、汚れは落とさないとな」

「世界を正す、革命を起こす!」

 そう唐突に叫んだかと思うとガッと立ち上がって飛び出していった。

 料金が先払いでよかった。


 そういえばあいつ、あれからどうしたんだ?

 昨日、飲んでる途中で飛び出していったあいつは、酔って何か変なことをしていないといいが。

「よぉ、元気か! 健康か!」

 そんな心配してたら、そいつがやってきた。

「おお、元気だよ。お前は大丈夫か? 昨日……」

「何かあったか? 今日はやけに調子がいいんだ、やけにすっきりしているんだ」

「まぁ、昨日は楽しそうに話してたからな……」

 いつも内に秘めてるであろう不満をあれだけぶちまけたんだ、すっきりもするだろう。

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