第1277話:フィンド・シクルト~終わっていた村~

「ここは誰も住んでない、廃村だ」

 仕事で訪れた、村は草が生え放題、ドアや壁の一部は苔が蔓延り朽ちて穴が開いている。

「冗談だろ? だって依頼はこの村から出されたって話じゃないか」

「うん、だから間に合わなかったんじゃないかな」

 この村からの依頼を見てこの村に来たわけなんだけど、誰もいない。

 依頼の内容は付近に現れた魔物の討伐、依頼を見てからこの村に来るまでの間に魔物に村が滅ぼされてしまったんだろう。

「仕方ない、帰ろう」

「いやまて、おかしいと思わないか?」

「何が?」

「依頼が張り出されたのがまだ3日前、それからこの村が滅ぼされたとしてこんなすぐに朽ち果てた感じになるか?」

「確かに、最初から村人の趣味でこういうデザインをしていたという可能性は?」

「無くはないが、なしでいいだろ」

「じゃあ、なんで3日の間にこの村は朽ち果ててるんだ?」

「さぁ? 魔物がそういう魔物なのかもな」

「さて、どうする? 返って村が滅んでたことを報告するか、魔物を探して討伐するか」

「まぁ、ここまで来たし魔物を倒してから帰ればいいだろ」

「そうだな、村をこんなにした魔物も見てみたいし」




「見つけた」

「魔物か?」

「いや、村人だ」

 村の奥に進んだところには、普通にきれいな村があった。

「無事でしたか、依頼を請けて魔物を退治しに来たのですが」

 最初に見かけた村人に事情を話して、話が分かる人のところに案内してもらう。

「よく来てくれました」

「魔物はどこに?」

 挨拶もそこそこに魔物の所在について尋ねる。

 既に滅びたと思っていた村に人がいたんだ、気分が2段3段進んでいて食い気味になってしまった。

「ところで、村の入り口の廃墟はなんです?」

 依頼の話を聞いているうちに落ち着いてきて、気になっていたことを聞いてみた。

「ああ、あれは盗賊避けみたいなものです。都市の遺跡ならともかく明らかな廃村へやってくる盗賊はいませんから」

「できればあらかじめそれを伝えておいてほしかったですけど」

 あやうく、滅びてましたと報告しに帰ってしまうところだった。

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