第1241話:ベイカ・ザイクラ~落下中にて~

「はっ、やけに風が強いな……?」

「風が強いなじゃあねーだろ! ていうか今寝てただろ! 風が強いのは当たり前なんだよ今落下中なんだからさぁ!!!」

「そういえばそうだったな、しかし寝ていたとは心外な、あまりにもショッキングな出来事に気絶していただけだ」

「お前がそんなに繊細な奴じゃねーことは俺が一番よく知ってるんだよ! お前は気絶してたんじゃなくて、寝てた!」

「さもありなん、しかし慌てたところでどうする? 私もお前も、空を飛ぶ術を持ち合わせているわけではあるまい?」

「それはそうなんだけど、せめて最後まであがけ! お前は諦めが良すぎるんだ」

「一度死んだ身、死ぬときは死ぬと諦めるが見苦しくなくて良いだろう」

「俺はもっと生きたいの! いつ死んでもいいとかいう達観した生き方しやがって…… お前は結構賢いんだから何か解決策があったりするんじゃないのか?」

「さて、いくらか高所から落下した衝撃を和らげる術は持ち合わせているが、それはせいぜい4~5階建てのビルから落下する程度の物、このように終端速度で落下している際に使用できるような物ではないよ」

「どうするんだよ~、空中に放り出された時に携帯端末デバイスも落としてるから今使える魔法を探してDLするなんてのも間に合わないしさぁ~」

「うむ、ならば最も可能性があるのはこう身体を広げて空気抵抗を上げ、落下速度を少しでも減じるか、飛行能力に覚醒する確率に賭けて脳の覚醒を期待するか、もしくは……」

「もしくは……?」

「ギャグ時空の判定が入るよう空間をギャグにするか」

「ギャグ時空……? ふざけてる?」

「ふざけてはいない、こんな超高高度からの落下をギャグで済まして穴から這い出てくるような世界があるのだ。その物理法則が適用される空間を呼び込みさえすれば、

「なるわけがないだろうがぁ!!!」

「さて、私が今提示できる策はこの程度だ。あとは好きにしてくれ」

「うぐぐ……」




「意外となんとかなるもんだな……」

「いやぁ素晴らしいギャグ時空を見せてもらって私も満足だよ。放屁で落下の速度を一瞬だけ押しとどめたのは見事だった」

「絶対それ他で言うんじゃないぞ!!! あれはどっちかっていうと事故だからな!? 超能力覚醒を狙って力んだら出ただけだから!」

「それも含めて見事だった……」

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