第1195話:テグリ・ゲーデ~ニコイチ~

「先生! 急患です!」

「はいはい、どうした?」

 慌てて飛び込んできた助手に呼ばれてのんびりと出ていく。

「あぁ、こいつはひどいなぁ」

 出ていくと台の上には上半身だけのロボ、いやサイボーグかな。

「本人の意思確認はできた? それと保証書とか、こっちで手を入れると保証聞かなくなって後から面倒になる場合があるんだよなぁ」

「大丈夫です、事故時はどこの修理工場でも修理を行える型だという証書を確認してあります」

「なるほどねいいでしょ、しかしこの破損度合い、追加パーツが必要なんじゃないの? うちはあんまり在庫ないよ? 仕方ない、とりあえず破損がでかい下半身は外して本人と話すか」


「やぁ、起きたか?」

「ここは……?」

「整備工場だよ、今からあんたを修理するつもりなんだが、どうする? こんな小さいところでいじられたくないってのがあるなら、適当に放り出して救急通報まではしてやる」

「ああ、俺は死にかけたのか、下半身が無いな」

「破損がひどかったから外させてもらった、思い入れがあったか?」

「いや、いい、そのまま廃棄でもパーツ取りにでも使ってくれ」

「わかった、しかし今下半身丸ごとみたいなパーツ在庫が無くてなぁ、どうしたものか……、入荷待ちの間車椅子ってのもかわいそうだしなぁ」

「先生! また急患です!」

「今取り込み中なんだが……。すまん、ちょっと待っててくれ」

「ああ」


 こんど運び込まれてきたサイボーグは上半身が全て吹き飛んでいた。

「いやこれは即死だろ」

「サイボーグですからどうかわからないじゃないですか」

「だいたい頭に残ってるから頭潰れてたら死んでるよ。そうだ、ちょうどいいな、こいつをあいつにくっつけてしまおう。いい感じに接合部分以外のパーツを外して整えておいてくれ」

「わっかりましたー!」


「待たせたな、ちょうどいま下半身が入荷したところだ、とりあえず仮で着けて、また好きな奴に換装してくれ。うちで発注してもいいがね」

「そうさせてもらおう」

「じゃあ少し寝てなよ」

 さてこれで解決、上半身くんには一旦寝ててもらって、あの下半身をくっつけるために腰回りのコネクタを調整する。


「ようし、まぁ奇跡的にバランスはいいな、仮の下半身だし上出来だろう」

「ええ、ありがとうございます。新しい下半身が決まったらまた来ますね」

「おう」

 接合は成功して、翌朝彼は元気に帰っていった。


 後日、彼が訪ねてきた。

「新しいパーツ決めたのかい?」

「いえ、あの時から実は……」

「てめぇーか、勝手に俺を別の奴にくっつけたのは!」

「ん、今のは?」

 彼以外の声がした、彼の口からなんだが、彼の標準で使っている声ではない。

「こいつの下半身にされた者だ、俺はこないだ上半身を吹き飛ばされたと思ったら気付けば勝手に別人の上半身をくっつけられてたんだよ、今日は案内させるために黙って上の奴に従っていたが、元凶がお前というならば容赦しねぇ、さっさと別の人が入ってない上半身に付け替えろや!」

「あー、なるほどな」

 こないだ運び込まれてきた下半身の奴は全身に意識がある奴だったのか、頭が吹き飛ばされても新しくパーツを接げば問題なく動けるとかそういう奴。

 今は新しく継がれた上半身に意識を伸ばしてみたら別の奴の生体脳があってさぞ驚いたというところか。

「怒りごもっともだが、今うちには上半身も下半身もパーツの在庫がない、もともと細かい調整や整備をするための工場でな? 発注して届くのを待ってくれ」

「そうなると、」

「しばらくは二人で暮らしてくれと言うしかない」

 もしくは他所へ行ってくれ。

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