第1186話:フォエルド・フスーピド~嘘つきの日~

「今日は嘘しか言ってはいけない日なんだよ」

 朝、唐突にそんな話をされた。

「へぇ、そんな日があるんだ、実は朝ごはんはまだ食べてないんだ、こんな感じ?」

「全然ダメ」

 嘘しか言えないっていう中で全然ダメってことはこれはオッケーってことなんだろう。

「教えてくれて、あり……感謝なんてしてないんだからな!」

 嘘しか言えない日なんだから感謝を直接伝えてはいけないな、彼女も笑顔だから適切に伝わっただろう。

 そのまま別れて、街へ出ると嘘をついている風なのに普通にやり取りができている人たちが目に入る。

「あなたのことが嫌いなのよ」「それは僕もだよ、別れよう、その方が清々する」

 表情もそれっぽく気まずい現場を見てしまったと普段なら思うが、嘘を言う日とわかってるとほほえましい光景に見える。

 しかし、結構みんな嘘を言って真意を理解する能力にたけているな……。

 僕はあまり嘘をつこうとしても思いつかないし、この嘘しか言ってはいけない日だとあまり発言できないな……、困った。

「僕は実は嘘を吐くのがめちゃくちゃ得意なんですよ」と言うか、嘘ってそういうものだったか、そこからどうやって話題をつなげていけばいいんだろう、しかも嘘だけで。

 ううん、困ったな……。

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