第1183話:フォトール~道場破り~
「道場主の方はおられるかな?」
ある日、トレーニングしていたら道場に来客が現れた。
「今は留守ですが、何か用ですか」
「ああなに、道場破りを少々」
「道場破り……、道場破り!?」
「いかにも」
「少々お待ちを」
裏に数人連れて下がり、どうしたものかと相談する。
「道場破りって、つまりあれだよな。道場主と戦って負かすことで道場の権威ってやつを地に落とすって言う道場破りだよな?」
「それ以外の道場破りなんてものは無いだろ、今先生いないぞ、連絡するか?」
「連絡したところで……」
ちらりと玄関でおとなしく待っている道場破りをみんなで見るが……
「強そうだよな?」
「ああ、先生で勝てる気はしない」
「先生、弱そうだからなぁ」
ダメそうだと全員で首を振る。
「まてよ? 最初から先生が弱そう出し、この道場の権威ってなんだ?」
「そういえばそうだ、ここの先生ならあんまりきつくなさそうって理由で選んだ道場だしな」
「じゃあ呼ぼう呼ぼう呼んじゃおう」
表に出ていって「今呼びますから、少々お待ちください、お茶でも飲んで」とお茶を出す。
「敵地で出されたものは口にしない」
裏から少し「おぉ~」って聞こえた。わかる、すごい道場破りっぽいセリフだもんな、テンションが上がるのもわかる。
「ようやく帰って来ましたか」
少しして先生が帰って来た。
「はいはい、君が件の道場破りという奴だね」
「ええ、お手合わせ、よろしくお願いします」
そうして、先生と道場破りの試合が始まった。
「なぁ……」
「なんだよ、今話しかけるんじゃないよ」
「あんな先生見たことあるか?」
「あるわけないだろ……」
先生は強かった、道場破りの技をすべて見切って捌き切る、しかし相手が隙を見せても撃ち込まない。
それがどれだけ続いたころだろうか、道場破りが距離を取り、構えを解いた。
「さすがですね、先生」
「まぁ、お前も腕を上げたようだ」
「え、」
「えええええ!!!」
「その道場破り、先生の弟子だったんですか!?」
「そうだよ、お前らの兄弟子ということになるな。ここしばらくは道場を出て修行をしているのだが……」
「じゃあなんで道場破りなんて」
「そう言った方が君たちは喜ぶだろう? 先生のことも侮っていたようだったし」
「この子らには本格的な修行はまだ早いからね。また顔出しに来なさいよ、それともこの子らに稽古つけていくかい?」
「いやいや、それはやめておきましょう。そうだ、お茶を一杯もらえるかな」
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