第1182話:フレート・スイグス~溶ける~

「あれ、お皿どこやったの?」

「え、出してない?」

「ここにあったと思ったけど……なにこれ……」

 机の上にあった皿は溶けていた。

 箸でつついてみると、まるで水のように机から零れた。

「溶けてるんだけど」

「お皿が溶けるわけないでしょ、ってあれ? 水でもこぼしたかな?」

「どうしたの」

「フライパンが溶けてる……」

 気付いたら、いろんなものが溶け始めていた、椅子、カーテン、シャンデリアのチェーン……

「危ない!」

 何とか落下してくるシャンデリアを避けることに成功した。

「何が起きてるかはわからないけど、逃げよう」

 床に落下したシャンデリアから床に火が点いた。

 貴重品だけ持ち出そうかとも迷ったけどそんな暇はない、というかそれらも溶けてしまっている可能性がある。

 そんな迷い方をしていたら、火が溶けて消えた。

 火事にならないみたいで良かったとか思うよりも、火すらも溶けるという事態に恐怖し、早くこの場所から逃げなければならないという

 とりあえず落下してくるものがない外へ。


「何が起きてるの」

「わからないけど、何か物が溶け始めたみたい」

「これうちだけだと思う?」

「見た感じ、他のところもそうっぽいけど」

 周りを見ると、他の家の人も慌てて出てきている。

 何事かはわからないが、見ているといくつかの家は溶け始めている。

「これ、地面も溶けるんじゃないの?」

「だったらどこに逃げたらいいの!」

 そう言う声がどこからか聞こえてきて辺りはパニックだ。

「そうだ、海ならこれ以上溶けるものは無い」

 その言葉が聞こえてきたのが引き金となって皆、海へ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る