第1171話:ホアシア・フルールデ~伝説の手記~

「トロメロトライの手記がこの村にあると聞いたのですが」

「トロ……、なんだい?」

 記録を頼りにトロメロトライの足取りを追い、最後を過ごした村がここであることを突き止めて訪れたわけなのだが、現地の人には特に伝承の類は無いようだった。

「トロメロトライです、彼は3000年以上前に居た伝説の旅人でいくつもの旅行記を出版しているのですが、話によれば彼は常に手帳を持ち、旅の記録をつけていたらしくそれを基に旅行記を執筆していたとされています。しかし、その手記自体が発見されておらず、出版された旅行記よりも彼が体験したままに記されているはずであるとされているのです」

「それで、君が探しているのがその……」

「トロメロトライの手記です。何でもいいんです、3000年ぐらい前の村の記録は残っていませんか?」

「いやぁ、心当たりは無いなぁ、長老ですら130歳だ、なかなか大昔の記録というものは……。そうだ、確か村の中心の像は何度か補修はされているが原型は3000年ぐらい前だと聞いたことがあるような……」

「ありがとうございます、村の中心にある像ですね」

「ああ、探し物ト……見つかるといいな」




「これが3000年前からある像か……」

 人を象ってそうな形はしているが、最初からこうだったのか長い時の中で補修を繰り返した結果なのか、いまいち何の像なのかはわからない。

 タイトルや由縁が記載されていそうな大きさのプレートも併設されていたが、こちらも風化していて読めない。

 他にも誰か知っている人はいないかと村の中で話を聞いて回ったのだけど、トロメロトライという名を知っている者すら出会えなかった。

 まぁ伝説の旅人とは言っても村にとってはただの旅人、伝承になるようなものではないか……

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