第1156話:ムレア・シファニー~時の果て駅~

 ある日、ネットサーフィンをしていると興味深い記事が流れてきた。

 所謂都市伝説の類いを纏めたということなのだけど、その中のひとつ【時の果て駅】というものに心当たりがあった。

 私自身に行った経験があるわけではない。

 過去に、時の果て駅に行ってしまったであろう人と話したことがあるというだけだ。


 都市伝説で語られる、時の果て駅とは列車に乗っていると気づけば知らない終着駅にたどり着いているというものだ。

 帰りの列車はなく、いつの間にか夜になっていて、駅前通りはどこもシャッターがしまっている。

 それだけならば、ただ寝過ごして乗り過ごしただけの人のようだけど、時の果て駅では夜が明けないそうだ。

 まるで、その先の時間が存在しないとでも言うかのように。


 と、いうのが時の果て駅という都市伝説の概要。

 先日私が出会ったのは駅のベンチで寝ていた人だ。

 もちろん時の果て駅ではない、普通の、普段使う家から最寄の駅だ。

 あまりにも無防備に寝ているものだから声をかけて起こした。

 眠気と混乱が混ざったような口調で彼が話すのは「今は何時か」「列車は動いているか」「外の店が何時まで経っても開かないがここはそういう街なのか」「あなたはどこから来たのか」とういう質問ばかりで、こちらの返答には理解できない言葉を聞いたという顔をする。

 思い返してみれば、彼の口にした疑問は時の果て駅で誰かと出会ったら聞きたいと思ってしまう内容だと思う。

 今となっては彼に再び会って話を聞くことは叶わないが(元より会話を成立させられないが)、きっと彼はあのとき、時の果て駅にいたのだろう。

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