第1090話:チカメ・フウンド~荒野の木~
「知ってるか? ここから西へ行ったところに木が一本立ってるんだが」
「知ってるけど、あの木に何かあるのか?」
待合室での噂の交換、有力なものから眉唾物まで様々な噂を聞くなか、興味深い話が飛び出してきた。
「あんな草も生えてないような荒野の真ん中に一本だけ木が生えてるのはおかしいと思わないか?」
「……! 何かの目印ってことか」
「あくまで噂だけどな、宝物や封印、死体を隠したとか、いろんな話がある」
「宝物だといいよな」
「だなぁ、まぁ、誰も確認したって話が流れてない時点で結果は察せるようなものだけどな。宝があったけど、すでにとっくの昔に掘り起こされて今は何もない説が有力かな」
「なんだ、噂を持ってきたわりに否定するようなこと言って」
「まぁ、期待して探しに行ってがっかりするんじゃねーぞってことだ」
「そいつはどーも」
「まぁ探しに来ないはずがなく」
あんな噂を聞いたら当然だ。
草も生えていない、岩と岩と岩の荒野に一本だけ生えてる木を目指して進む。
「ん、この辺の地面、こんなガタガタだったか」
木の回りの地面が一度掘り起こされて固まったかのように、というか実際そういうことがあった不整地になっていた。
噂を聞いてみんな掘りに来たんだろうなってぐらいガタガタだ。
みんな噂に踊らされてるなぁ、俺が言えたことじゃないんだけど。
結局、なにも見つからなかったけど後日あの木の周りが緑地になっているという話を聞いた。
謎の環境変化だ、何か原因があるのではないかと噂されていたが、もうあの辺りは確認しに行くのも面倒だ。
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