第1070話:イチア・チューリグ~仮~

「仮に、明日僕は死ぬとする」

 同居人が突然変な話をし始めた。

「何その仮定」

「あくまで仮定の話さ。ふと少しだけ気になっただけのさ」

「ふぅん、で君が明日死ぬとして、何が気になったの?」

 暇だし話題にのってみる。普段はこんな仮定の話を話題に上げることはないから珍しくて、私も気になる。

「仮にだぜ、仮に。明日僕が死ぬとして、君はどうする?」

「私? 別に私に君の生き死には関係ないと思うんだけど」

 彼がいなくなったとして、自分にどういう影響が出るかはまったく想像できない。

「関係ないだって? さすがにそんなことはないだろう、僕と君はもう一緒に暮らし始めて長い、さすがに明日僕が死んだら絶対に何か影響あるだろ。明日の晩ご飯だってどうするんだい」

「別に、私は君がいなければ自分で自分の食事ぐらい用意するし、不足は意識しなくても補えるよ」

 実際に一人暮らしの時期もあったんだし、問題はないはず。

「本当かねぇ」

「本当だよ。そもそもそんな仮定は死んでからして」

「死んでからだったら仮定じゃないじゃないか」

「わざわざ考えることではないってこと、馬鹿な事言ってないで、今日のご飯はやく用意して」

 お腹が空いたのだ、変な話題で晩御飯の時間を遅らせるのはいやだ。

「はいはい」

 彼は嘆息気味にキッチンへ向かった。


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