第1069話:ジュン・イツムラ~主人公を見た~
彼はそれほどまでに輝いて見えた。
ただすれ違った僕には彼を彩る物語は何も知ることはできないし、彼からしてみれば僕は認識すらされないモブだ。
僕は僕で、僕の物語の主人公だっていう自覚はあるけど、それでも彼とすれ違った僕はその瞬間だけ間違いなく彼の物語のモブの一人だった。
人生の主人公は自分であるという話がある。
それはあくまで自分にとっての物で他人にとってはそうではないなんてことはよくあることだ。
だけど、それを自覚してしまうなんていうことはない。
自己肯定力が著しく低いとかであれば常に自分のことをモブだと認識して生活しているなんてこともあるかもしれないが、僕はそうではない。
たまに、相対した会話から「こいつ主人公っぽいな」って思うことはあるんだけど、それはその時の話の流れとか、言葉選びとか、選択の結末とか、そういう物を見て感じることだ。
街ですれ違っただけで、主人公だなんて思わない。普通は。
それだけ彼の主人公力が高いということなんだろう、ただ慌てながら自転車で走っていただけだというのに。
本当に主人公な奴って言うのは、他人の人生においてもめったなことにはモブになんてならないものなのだろう。
僕ももう少し主人公力を高めないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます