第991話:ツカダ・ノブリア~奪われた微睡み~

 目を覚まして時計を見る。

 まだ日が灯るには時間があるけど、朝の身支度等を考えれば丁度よい時間。

 目覚ましをその時間に設定している訳ではない、ただその時間に目が覚める。

 本当はあと少し寝ていても大丈夫で、自分としてももう少し寝ていたい。

 しかし、どういうわけか最近はこの時間に目が覚めてしまう。

 不眠症の類いとも疑って診察を受けに行ってもみたが、医者には「健康的な生活じゃないか」と門前払い。

 朝の数分の睡眠時間を健康的とはいえ、何らかの理由により奪われる身にもなって欲しい。

 その少しの微睡みの時間が生きていて一番幸せなんだぞ僕は。

 その時間を瞬時に覚醒させて終わらせてしまうなんてことは断じて許せない。


 どれだけ調べても朝早く起きるようになってしまうという症状は健康の改善としての話ばかりで、それを治療しようなんて話は出てこないし、出てきてもそれは朝ゆっくり寝られる時間作りの話だ。

 考えてみれば当然だ、基本的に皆にとって朝起きられないというのはデメリットであって、朝ゆっくり寝ていられる体質ではなく、朝ゆっくり寝られる環境の方を望む。

 しかし、今僕の身に降りかかっている問題は、朝ゆっくりできる時間はあるのに体は朝ゆっくりできないというもの。

 これが健康的に発生している問題でないとしたら、なんだろうか、呪いの類いだろうか。

 しかし、呪いだとしたらいったいなんの目的で僕を朝起きれるようにしているんだろうか。

 思い当たることは......ないな、あってもやたらと遅刻に厳しい上司ぐらいのものだが、呪いにてを出すほどではなかったと思う。

 職場全体では遅刻には寛容であるし、いったい誰がなんの目的で......

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