第990話:ファノ・シルア~更新~
「そっち、荷物まとめておいて」
「この箱ですか?」
「そうそう、それ」
今日は施設の更新の日で書類や物資の物理資材を運び出し作業をしている。
「それにしても、定期的な更新ってなんで必要なんですかね?」
「喋ってないで手を動かして、と思ったけどちょっと疲れたわね。休憩がてら教えてあげるわ」
そう言って、先輩は持っていた箱を置いて、飲み物を持ってきた。
「ここの建物は不安定でさぁ、たまーにリセットというか、保護系術式を補強するなりなんなりの作業が必要になるの」
「なんでそんな不安定な場所に事務所を構えてるんですか」
「都合もいいから、なんていうかうちで使いやすい質のエネルギーがあるのよ、その不安定さにはね」
「エネルギー?」
「そうそう、エネルギー」
なんだかよくわからないが、不安定さを利用しているらしい。
「さて、こんなもんよ、作業再開!」
そう言うと横に置いていた飲み物を一息に飲んで作業に戻る。
「エネルギーが必要だからこうやって定期的な更新作業が必要なのかぁ……、でもあれ絶対に必要かなぁ……?」
先輩が言っていたエネルギーっていうのは、支給されている変なスプレーのエネルギーだろう。
あれを調査後に撒くように指示されているがなんのスプレーなのかは教えてもらってない。
一度撒き忘れたことがあったけど、特に何も起きたり問題になったりはしてなかったし、申請してもおとがめなしだ。
一応それ以降は撒き忘れの無いようにはしているけど、本当のところは撒いても撒かなくってもいいらしい。
ん、ところで更新しなかった場合、どうなるんだろう?
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