第984話:シライド・フウ~逃げられた神~

「しまった……」

 ただ話をしたかっただけだったのにしくじったか……

 あの少女に余が恐ろしい物と認識されてしまったとしたら、これからは誰も掃除に来たりしてくれないかもしれない。

 それどころか、領域の維持すら怪しい。

 近くの村の住民の認識によって、この社を余の領域にしているのだから、神ではなく恐ろしい何かと定義されてしまってはどうなるかわからぬ。

 領域を失うだけであれば良い、またどこか別の村を見つけて神として奉られれば良いのだから。

 余自身が変質する事態は避けたい。そうなって最悪の場合、消滅は免れないだろう。

 不安に思ったところでどうにかなる問題でもないか……

 なるようになるか、いや、村まで出向いて奇跡の一つでも見せれば変わるか?

 そこまでの力があれば良いが、それともすでに先ほどのことが知られてしまって、化け物として退治されるか。

 うん、早急に社をたたんでどこか別のところへ行くとしよう。

 神力の効く範囲を社ごと縮めて体に返す。

「さて、どこへ行くか……」

 この数百年とこの社にとどまっていたから、いったいどこへ行けば信仰を得られる土地があるのかさっぱりわからない。

 連絡が取れる他の神の土地を間借りさせてもらえるといいんだが……

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