第979話:クレン・イイラン~友達一覧~

「…………」

 携帯端末デバイスの画面の表示を見ながら考え事をしていると、いつもやたらとテンションの高い奴が話しかけてきた。

「おうどうした友人!」

「あ、いやちょっとな」

 画面の表示には「友達一覧」とあり、誰の名前も載っていない。

「…………」

「な、なんだよ」

 つまり、彼も僕の友達ではないということだろうか……

 いや、彼は僕のことを友人だと言ってくれるが、それは嘘で僕との友人付き合いを偽装することで何らかの利益を得ている……?

「いや、なんでもない」

「今日なんかへんだぞ友人」

 そういえば前からおかしいと思ってたんだよな、こいつは僕のことを友人って呼ぶ。

 わざわざ友人であることを強調する理由はなんだ?

 やはり友人ではないのか?

「疲れてるなら今日はやめとくか? 帰るか?」

「いや、大丈夫、別に問題ないから」

 ちょっと、様子を見て見極めるしかない。

 本当に彼が友達として僕と接しているのか、そうでないのか。


「とりあえずしばらく歩くか」

 おもむろに歩き出す。

「あれ、ゲーセン行くんじゃなかったっけ、あっちだろ?」

「ん、単純な話今日は歩きたい気分になっただけだよ」

 いや、違うな。

 僕が疲れてるみたいだったから、激しい音や光がある場所を避けたんだ。

 こういう気遣いができる奴なんだよなこいつは、友達一覧なんてものに載ってなくても、彼は僕の友人だ。

「ん、お前それ……」

「ああ、なんでもないよ」

「いや、そういやあ携帯端末デバイスでは友達登録してなかったよなって思って」

「へ? 登録?」

「へ、も何もそりゃあそうだろ、勝手に増えるもんでもないだろ。初めてだろ? 操作教えてやるからこっちよこせ」

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