第972話:スータン・イ~長い長い紐~
「そこの紐、引っこ抜いておいてくれ」
「はぁい」
今日は小金稼ぎに、仕事をするための仕事をしに来た。
なんとも不思議なことだが。普通にやればもっと低コストで簡単に終わる作業をわざわざ人力で行って賃金をくれるという場所がいくつかあんだ。
仕事内容は建物の解体、いや解体自体は終わっていて残骸の撤去作業だ。
上長に指示されるがままにがれきを運んだりするだけの簡単な仕事だが、肉体労働でもあり、賃金もそこそこ高い。
「さてと、」
呼吸を整え、指示された紐を掴む。
グっと力を籠めると、思ったよりもするすると紐は手繰り寄せれて、しりもちをつく。
「いたた、思ったより簡単に抜けそうだな……」
立ち上がって、掴みなおして再び引っ張る。
こんどは一気に引っ張らず、ゆっくりと。
相変わらずするする抜けて気持ちがいい、きもちがいいのだが、長い。
長すぎる、なんだこの紐は。
ずるずるずるとずっとひっぱっているが、終わらない、永遠に引っ張れる気がする。
「どうなってんだ……?」
不思議に思いながらも引き続ける。
ま無為な仕事らしいっちゃあ、らしいが、どれだけ引けるんだろうか。
しばらく引き続けて、引っ張ったのが後ろの穴に入って手元に戻ってきていることに気づいた。
なんだこれ。
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