第961話:クルスロ・カメティ~騙される日~

「ああ、今日はそちらへは行かない方がいいよ」

 友人に招待されて彼の家に向かってる途中、謎の老人に声を掛けられた。

「なぜです?」

「今日はそういう日だからさ。まぁ用があるというなら止めはしない、危険というわけではないしね」

「? まぁ、用事があるので行きますけど」

「そうか、頑張れよ……」

「はい?」なにやら嫌な予感がする。


「やぁ、よく来たな。待っていたよ」

「ん、ああ。……ところで、今日ってなんかの日か?」

「何が?」

「いや、知らないならそれでいい」

 あの老人がただの変な人だったんだろう。

「よし、ちょっと外を歩こうか」

 安心していると、友人が提案してきた。

「いいけど、今日は何の用で呼んだんだ?」

「いいからいいから、まずは少し歩こうか」

「……?」

 なにやら様子がおかしい。

「まずは商店街の方へ行こう」

 怪しみながらも先導されるがままについていく。

「あの店のテンアムがすごいおいしいんだけどさ、売り切れるのが結構早いんだよ」などと、友人はあんまり意味の無さそうな話をしている。

 と、その時

「よぉよぉ、そこのにいちゃんたち、ちょっといいか?」

 いかにも柄の悪そうな奴に絡まれた。

「なんですか?」

 それに毅然とした態度で返す友人、こんな奴だっけ?

 僕は普通にビビった。

「なんだぁ?その態度は」と掴みかかってきた奴を、さっといなし、地面にたたきつける友人、それを嘘だろ……?とみている僕。

「最近はちょっと治安が悪いんだ」と、何でもなさそうに言う友人。

「お前強いな……」としか言えない。


 その後も、商店街の福引で大当たりを出し、なんかいい食材をもらったり、宗教勧誘だと思ったら現金を何の契約もなしにもらったりと、嘘みたいなことが立て続けに起こる。

 騙されているんじゃないかとも思ったが、特に騙されて損をしている気もしない。

「結局なんだったんだ?」と、帰ってきた友人宅で景品で作った鍋をつつきながら聞いてみたら「うまいもんが食いたくなったんだ」と返された。

 なんだったんだ……

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