第945話:スウニア・ロルフト~有る場所無い場所~

「無い場所を探している」

 来たお客さんから話を聞いてみると、開口一番そう言われたものだから

「……それは無理ってもんでしょう」

 素で返してしまった。素でなかったらもうちょっとマシな返しができたというわけでもないが。

「無い場所だものな……」

 お客さんも気を悪くした風ではなく、まぁ妥当だろうな、という反応。

 変なお客さんではあるけども、探しているのは真剣っぽいから、一応詳しい話だけでも聞いておこうか。

「一応【無い場所】って名前の場所はあるとは思うんですけど、そういうものを求めているわけではないんでしょう?」

「うむ、存在しない場所を探しているという解釈で間違いない」

【ない場所】

「うーん、困ったなぁ。無いものを探してくれと言われてもどうにもならないんだよなぁ。うち、一応失せ物探しは生業にしておりますが、あったものを探すことはできても、最初から無いもの無い場所を探すっていうのはどうにも苦手なものでして」

「いや、いい。もとより博打といろいろな場所を探して回っているのだ、邪魔したな……」

「いやいや、いいんですよ。話を聞くだけならタダですから。時間のある時に探しておくので、心当たりがあったら連絡しますよ」

「助かる……では」

 そう言って、彼は去っていった。

 無い場所、そんなものは無いが探してみたらあるのかもしれないな……。

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