第893話:アイル・タニオン~無価値~

「よぉ、《ゴミ漁り》」

「なんだ《竹開き》」

 同業者、できれば会いたくはなかった奴。

「ゴミ山漁ってなんかいいものあったかい?」

「いーや、この遺跡はどうもゴミしかゴミ捨て場には捨てなかったらしい。そっちは?」

「うん、こっちもなぁ。パイプの内側に貴重品を隠す文化は無かったらしくて、苦労してるよ」

 ほこりだらけの鉈を一振りして、鞘に納める。

「さて、俺は引き上げるよ。お前は?」

「うーん、価値のありそうなものは無いからなぁ、僕も適当に引き上げるさ」

 調子が悪かったらしい彼に安堵しつつ、その背中を見送る。

「あいつ、一人だけ調子がいいとねちっこく自慢を続けるんだよな……」

 はぁ、とため息をついて、目についた価値は無さそうだが個人的に気に入った金属片をパックに放り込んで帰ることにした。


「ただいま、」

 誰もいない家に一言投げ込んで、価値のあるものを見つけられなかったパックを開く。

 今日拾った金属片をパックから取り出して、適当に紐を繋ぐ。

 今までに拾ってきたかけらを繋いだ、モービルに追加する。

 うぅん、結構大きくなってきたな。

 もうちょっと収穫が欲しいところでもあるんだが、ゴミ漁りだけではやっていけないかもしれないな……

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