第879話:ホフラ・ジンレト~死後彷徨うもの~

「あれ?あんたもしかして……」

「うん?」

 見ず知らずの人から声を掛けられた。

「彷徨いのホフラだろ? 本当に死んでいたんだな……」

「確かに俺はホフラだが……、彷徨いなんて名で呼ばれたことはないぞ」

「ああ、そうか。そりゃあ知らないよな。あんたは死んでいたんだから」

「詳しく聞かせてくれないかな」

「そりゃあ話すよ、都市伝説に生きて会えてその話をせがまれたら話すしかないだろ」

「都市伝説……?」

「いや、生きてってのもおかしいか、死んでたんだもんな?」

「いやまぁ、死んではいるけども」

 興奮気味に話すので全然要領を得ない。

「つまり?」

「あんたは死体が発見されなかったんだ」

「死体が」

 確かに心当たりはある。

「地元で有名だったあんたが死んだって話だけが広がって、死体が見つからないって話も広がっててなぁ、本当に死んだのか?って信じられてなかったんだよ」

「なるほど」

「実際のところどうなんだい? なんで死体が残らなかったんだい?」

「あー、俺は一応自殺だったんだが、遺書だけ残して火山にな……?」

「……はー、火山?火山に飛び込んだのか? マジで? そりゃあ死体残らないわ……」

「でも死体が見つからなかっただけで彷徨いなんて名はつかないだろ? 都市伝説にしても弱い」

「ああ、それな。あんたが死んだって後に度々目撃されててな」

「は?」

「だから、あんたの葬式の後にちょくちょくあんたが目撃されてて、だけど誰も証拠を出せないから都市伝説になってなぁ、そんで死後彷徨い歩いてるから彷徨い」

「さすがに心当たりがない……ていうか、死んだ後にそんな有名な存在になってしまったのか……?」

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