第864話:ダイナム・ラオンド~鍵の樹~

 夢を見たと思う。

「これは?」

 僕は知らない場所にいて、変な樹?のような形をした何かを見上げていた。

「断片化された世界の破片、死んだ世界の生き残り、それにアクセスするためのデータベース、そして鍵」

 意味の分からないことを言われたのは覚えている、誰に言われたかは定かではない。

 老人だったような気もするし、少女だったよ

 うな気もする、ロボットのような見た目をしていたかもしれない。

 そんな曖昧な印象で、声も覚えているわけが無く、容姿の詳細もわからない。

 目を覚まして頭の上に?が浮かんでずっともやもやしていた。

 死んだ世界の生き残りとか、アクセスする鍵だとか、断片化された世界の破片とか、よくわからない話がずっとぐるぐるしてて、何にも手につかなかった。


 昼を過ぎた辺りでそうだと思いついて、図書館に行くことにした。

 ここの図書館ではなんでも情報がそろうし、探そうと思えばたぶん見つかるだろう。

 そう考えてのことで、とりあえず本を探して歩き回ったわけだが、思ったよりも断片的すぎるキーワードでは見つからない。

「夢の話だったのかなぁ……」

 にしてはリアル過ぎた、いや全然覚えてないし、曖昧な記憶だけどたぶん、どこかに在る気がするんだ。

「おう、ダイナム。珍しいな調べものか?」

「んあ、ちょっとな。探してる場所があってな」

「ほぉん、何々?鍵、アーカイブ、断片化された世界……? これれじゃねぇの? こないだ授業でやったやつか?」

「なに、知ってんの?」

「お前は寝てたからしらんかもな、そういう概念があるんだとよ、断片化されて消えた世界は消えなかった部分が残ってるとか。こっちに来ている世界からその断片化した世界を計算して再現したりとかな」

 それを夢に見たのかもしれない……

「それって、講師は誰だっけ?」

 聞けば、夢の中のおぼろげな記憶がはっきりするかもしれないと思った。

「フルニードのじいさんだよ、自分が寝てた講義ぐらい覚えとけ」

 なんとなく、違うと思った。

 老人かもしれないとは思ったけど、フルニード先生は間違いなく違う。

 では、あそこはどこで、あれは誰だったんだろう。




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