第856話:カタクラ・ホウマ~凍る道~

 この時期は有機体の生物は数を減らす、死んでいるわけではないが姿が見えなくなる者が多く、街の方まで来ても人通りが少ない。

 どうやら彼らの殆どは寒さに弱いらしく、熱を溜めた室内での活動に切り替えるらしい。

 私には気温は知覚できても感覚として存在しないから、外気温で活動範囲を変えるというのはいまだに不思議な感覚だ。

 友人たちも殆どそうやって籠っているから一人で暇を持て余している。

 暇で暇で仕方ない、普段危なそうで行かない裏道の探検でもしてみようか。


 いつも日の当たらない、暗い道。

 ライトを付けて進む。

 日が当たらないからか、地面が凍っていてパキンパキンといい音が鳴る。

 うん、楽しい。

 普段通らない道だからと行って道に迷ったりなんてしないし、ちょっとした探検だ。

 暗い道はずっと凍っていたらしく、だんだんバキンバキンと氷の音が大きくなってきた。

 さて、このまま進んだらでかい一枚氷が手に入るかと思ったが、路地裏を抜けてパキンパキンと軽い音になって明るい道に出てしまった。

「あれ」

 この辺りまでこればもう道は凍ってなくて、良く知ってる道に出てしまったからもう探検は終わりだ。


 普段通りの道だしと油断したとき、ちょっとした影になっていたのか凍っていた地面で滑って尻もちをついた。

 周りに人がいないときで良かった……

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